David_Mitchell

『ナンバー9ドリーム』や『クラウド・アトラス』等が日本でも出版されているイギリス人作家デイヴィッド・ミッチェルは日本で暮らした経験もあり、日本を題材にした『出島の千の秋』という小説も書いています。
そのデイヴィッド・ミッチェルがお勧めする日本人作家の小説5作品を見た海外の反応です。


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※紹介に関しては抄訳

■細雪:谷崎潤一郎
日本で『細雪』は谷崎潤一郎の傑作だと考えられてるね。
この本は1930~1950年の京都に住んでいた4姉妹の生活と人生を描いた大作だ。
実際に内容を説明するのは止めた方がいいだろうな。
これは家族の家庭内の物語ではあるけど、作者が谷崎潤一郎なだけに下には暗いものが流れているね。
彼の作品は最初エドガー・アラン・ポー的な体裁だった。
しかし関東大震災以後に京都に戻ってから作家として人格的な変貌を遂げている。
『細雪』はまるでヘンリー・ジェイムズが書いたような感じなんだけどバックグラウンドにはしっかりとエドガー・アラン・ポーがいて、それが家族の物語の頭上にしっかりと乗っかってるものだから、それが実に美味しい大胆さになってる。
これが美しいんだ。
私が読んだのはもう20年も前だけど今でもずっと心に残ってる。
自分にとっては20世紀最高の日本小説に入るね。


■沈黙:遠藤周作
これも20世紀最高の日本小説に加わる作品だ。
『沈黙』は私が『出島の千の秋』を書く時に特に助けになってくれたよ。
これはキリスト教が弾圧された時代の話で、日本の南東部に上陸した数名のポルトガル人司祭を描いている。
これは3つ目の選択肢の話だ。
信仰の話であり信念の話であり、宗教の話でもある。
私がこの小説を好きなのは非常に全キリスト教的な見方をしている所だね。
遠藤は カトリック教徒だけどこの小説からはカトリックに対して考え、宗旨替えを促すような内容は全く感じないと思う。
素晴らしい小説であり、素晴らしい歴史小説でもあるね。
登場人物の動機は複雑に絡み合っている。
ちょうど我々の動機も複雑に絡み合っている様に。
素晴らしい作品だよ。
大好きだ。


■華岡青洲の妻:有吉佐和子
有吉は男性が席巻している私のリストの中で選んだ女性作家のうちの1人だ。
こちらも歴史小説で『沈黙』の舞台よりも後年、19世紀初頭を舞台にしている。
記録では最初の麻酔薬、最初の偉大なる麻酔医は患者にガス麻酔を使ったアメリカ人という事になっている。
が、もし当時の日本が鎖国状態になければアメリカに先駆ける事50余年、1810年代に名前は失念してしまったが日本のとある医者が達成していたという事を世界の人々は知っていたかもしれない。
その医者の名前はこの『The Doctor’s Wife』の原著のタイトルにもなっている。
この本は麻酔の実験体ともなった彼の妻の視点で描かれている。
当時、乳房切除術などの外科的手術は体に与えるショックが死に繋がるため、基本的に死刑宣告と同じだった。
手術から生き延びる例は非常に少なかったんだ。
だから彼の妻は全身麻酔を願った。
この作品は医者とその妻、そして妻の献身が大いに描かれている。
(アメリカのテレビ番組司会者)オプラ・ウィンフリーが好きそうな話かもしれない(笑)
基本的には男性ばかりの分野の世界を女性の視点から眺めた良い作品だね。
凄く良い英訳本も出てる。
(海外で)広く知られた本ではないね。


■砂の女:安部公房
安部公房の傑作小説だ。
これは本当に洗練されて魅力的な小説で、砂丘の脇で昆虫採集をしていた男を描いている。
男は砂丘の穴の中に落とされ、穴から上げられない事に気付く。
非常にシュールだが、これはその小説のほんの一端でしかない。
これは長い小説ではないが非常に特異な小説だ。
似たような作品は1つもなく、安部公房の最高作でもある。
率直に言わせてもらうなら彼は狂気の人だ。
が、この作品には彼の全てが入っている。
素晴らしい映画版もあり、音楽は20世紀の日本を代表する作曲家・武満徹が担当している。


■博士の愛した数式:小川洋子
この小説はアメリカでもかなり知られているね。
6年前に出版されている。
小川洋子はおそらくニューヨークで最もよく知られた日本人作家のトップ5に入るだろう。
この『博士の愛した数式』は数学と愛について描いている。
小川洋子はかなり実験的な作家であり、彼女の実験は他の作家よりも成功する事が多い。
が、この小説は単純に素晴らしい作品だ。
控えめながら絶妙。
登場する博士は朝になると全ての記憶を失ってしまう。
彼はその事を承知しており、奇抜な方法で見せないようにしている。
家政婦は彼の生活を手助けするために雇われ、博士と家政婦、彼女の息子の間の絆がゆっくりと成長していく。
本当に美しい話だ。
家政婦は博士の過去について学んでいく。
彼は数学を愛しており、家政婦の息子に数学を教える事を愛している。
そして読者は読み進むにつれ数学の義務を学んでいく。
この本は数年前のクリスマスに妻からプレゼントとして貰ったんだ。




●Susan Greyling
三島由紀夫や太宰治は無いんだ?

●worker201
自分の日本人作家の読書履歴は1人の作家に支配されてる。
その名は吉川栄治。
宮本武蔵、新書太閤記、新・平家物語。

●Pastafarian
初めて聞く名前ばかりだけど何冊か読んでみようと思う。
サンクス!

●The Nesquikening
谷崎潤一郎に関しては同意。
(『細雪』は自分も間違いなくトップに選ぶ)
『博士の愛した数式』は素敵な小説だし、小川の最高作と言う意見には同意する。
でもトップ5に入るかと言うと…ないかな。
『砂の女』に関してはピンときたことが無い。
もし安部公房から選ぶなら『方舟さくら丸』かな。
遠藤と有吉に関しては彼の選んだ小説は読んだ事が無いのを認める。
(読んだ事がある作品は酷い翻訳だった)

自分がトップ5選ぶならこんな感じだ

2.女坂:円地文子
3.仮面の告白:三島由紀夫
4.雪国・千羽鶴:川端康成
5.こころ:夏目漱石

追加でお気に入りの3作は
丸谷 才一『たった一人の反乱』、安岡章太郎の短編小説、宮部みゆき『火車』。

●Beamish Kinowerks
↑大江健三郎は?
『芽むしり仔撃ち』は素晴らしいぞ。

●souse chef
↑川端康成の短編はアメージングだからね。
自分も漱石は好きだ。

●The Nesquikening 
>大江健三郎は?
>『芽むしり仔撃ち』は素晴らしいぞ。
読んでみようと思う。
彼の子供の話だったら楽しめそうだ。
大江健三郎の小説で好きなのは彼の作品で初めて読んだ『静かな生活』だね。

●marshoutlaw
>自分がトップ5選ぶならこんな感じだ
自分のリストと結構近い。
川端なら『みずうみ』、三島由紀夫なら『潮騒』になるかな。

●The Nesquikening 
↑それだ、なんで『潮騒』を忘れてたんだろう。
『みずうみ』は自分にとって不気味な小説だね。
思ってた以上に主人公に共感してしまったから。

●sevenzarkseven
偉大な文学ではないのは分かってるけど、よしもとばななの『キッチン』と『ムーンライト・シャドウ』は面白かった。

●Ice Cream Planet
↑そう投稿しようと思ってたところ。
よしもとばななは好きな作家で、『キッチン』は読んでで楽しいね。

●signsofrain
よしもとばななで好きなのは『アムリタ』。

●pierre clementi
デイヴィッド・ミッチェルが三島由紀夫に言及してないのが驚きだ。
『午後の曳航』は疑問の余地なく自分が今まで読んできた中で最も美しい小説なんだが。

●Alexander Knox
遠藤周作の『沈黙』はジーン・ルーアン・ヤン(アメリカのグラフィックノベル(アメコミ)作家)に多大な影響を与えた事は指摘する価値があるだろうな。
特に彼の作品『Boxers and Saints』に大きな影響を与えている。
『Boxers and Saints』はグラフィックノベルに関わっている者にとってとんでもない作品だよ。
デイヴィッド・ミッチェルの作品は『The Bone Clocks』を130ページまで読んだけど魅力的だね。

●efs120
自分の日本の小説トップ5は村上春樹のになるだろうな。
他の作家の作品を読んだ事が無いんだけど。

●alurin
↑自分が読んだ日本の小説の半分は村上春樹。
でも『砂の女』も素晴らしいよ。

●Douay-Rheims-Challoner
『砂の女』は勅使河原宏の映画で1番好きだ。
小説版も読んでみるかな。

●Ice Cream Planet
『砂の女』を読む理由をずっと探してきたけど、読んでみるかな。
デイヴィッド・ミッチェルの小説はは広大な所が好きだから、『源氏物語』が入ってないのはちょっと驚きだな。

●souse chef
↑『源氏物語』は傑作小説なのか、別の何かなのかわかりかねてる。
似たような作品は他にないから。

●Ice Cream Planet
↑自分はその両方だと思う。
可能だとしたら。
多くの歴史家が『源氏物語』を最古の小説だと言ってるしね。
自分の知ってる限り、紫式部は文学全体を永遠に変えてしまった訳で、だからこそ嬉しい。
『源氏物語』は自分が読んだ中で最高の小説であるだけじゃなく、最もパワフルで楽しい読書体験だったよ。

●pistachio frisbee
自分の中では常に『雪国』がトップ。

●Lord Lucan
マーティン・スコセッシの『沈黙』は良い映画になるだろうな。
※遠藤周作の『沈黙』をハリウッドが実写映画化し、今秋公開予定
 
●gshans
『砂の女』は素晴らしくも実在主義な小説だった。
お勧めするよ。
『細雪』も素晴らしい作品で、ジョージ・エリオットやディケンズのファンなら楽しめると思う。






日本でも名作との誉れ高い作品ばかりです。
近代の一般小説をスキップしてラノベの海外進出が加速している模様。
(『The Rising of the Shield Hero』の原題は『盾の勇者の成り上がり』、『Is It Wrong to Try to Pick Up Girls i...』の原題は『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』、『Makioka Sisters』は谷崎潤一郎の『細雪』)

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谷崎潤一郎 ((池澤夏樹=個人編集 日本文学全集15))
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