kickstarter
画像引用:kickstarter.com

今は日本で放送されるアニメのほぼ全てが海外でも公式配信・放送されるようになっていますが、海外ではメディア化されていないアニメも数多く存在します。
Pied Piper, Inc.はそういうアニメのメディアを海外で正規販売するためにクラウドファンドプロジェクトを立ち上げており、2013年に『イヴの時間』のクラウドファンドを始めた所、1日で目標額を達成して最終的に目標額の10倍である21万ドル(約2200万円)を集める事に成功しました。
現在は海外でも人気が高かった『スキップ・ビート!』の英語吹き替え版ブルーレイ/DVDを販売するためのプロジェクトを立ち上げており、こちらも目標額を大幅に上回る成功を収めています。
このPied Piper, Inc.が海外の掲示板で質問に答えていました。


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●Shippoyasha
君らが『日本アニメ(-ター)見本市』や同じようなショートアニメを1枚のブルーレイにする権利をゲットする機会ってあるかな?

●piedinc
↑正直言うと『日本アニメ(-ター)見本市』の権利関係がどうなってるのかよく分からないんだよね。
権利に関しては既に話が出てると思う。
でもショートアニメのオムニバスは凄く良さそう。
このコンセプトは絶対に覚えておくよ。

●Shippoyasha
↑確かに!
日本での権利はスタジオ・カラーとドワンゴが持ってるけど世界に向けてのローカライゼーションの交渉はしてるだろうね。
日本のアニメ―ターによるショートアニメは(『日本アニメ(-ター)見本市』よりも)集めやすいだろうし、海外のアニメファン、独立系アニメーターや新しいアニメーションスタジオはこぞって欲しがると思う。
答えてくれてありがとう!

●cdsboy
ヘイ、アン!
日本のパブリッシャーから日本国外への販売権を獲得するためのコンタクトや交渉をする事で難しかったのはどんな部分だった?

●piedinc
↑これは素晴らしい質問だね!
もう何時間でも語れる位だよ!!!
日本のパブリッシャーと海外販売の権利について交渉する事で最も難しかったトップ3(完全に主観的に)は
1.まずドアを開けて入るためには事前に何かの作品をローカライズしてる必要がある事。
そういう実績が無い場合は話を持ち掛ける事がまずほとんど不可能。
そう、これこそ『キャッチ=22』(ジレンマ)。
じゃあどうすれば最初の作品をゲット出来る訳?
これは運が必要だと言えるだろうね。
まずは理由が何であれ自分の事を信用してくれる人が必要。
基本的にはコネだったり、特定のタイトルの状況だったり。
あるいは何かユニークなものを提供できるとか。
私の場合は『イヴの時間』を扱えたのが本当にラッキーだった。

2.基本的に作品の権利はコンソーシアム(そう、製作委員会!)のものだという事で、だから返事を貰うのに何か月もかかるって事。
2015年の10月に声をかけた作品があるんだけど未だに返事が来ないよ。
しかも返事が”ノー”だった場合、本当の理由を知れるのが不可能な事も多い。
せいぜい”事情により現在このライセンスを取得するのは非常に困難です”と返ってくるぐらい。
凄いフラストレーション!
製作委員会のなかにクラウドファンドでのローカライズを好まない人がいると知った事も何度かあるね。
でも私がその人に自分のアイディアを直に売り込む機会は全くなし。

3.既に聞いた事があると思うけど、特に昔の作品は権利がゴチャゴチャになってる事もある。

●roninsascha
↑1番目に語ってる事が面白い。
国際ビジネスの授業でアジア各国ではコネが基本だって議論した事がある。
投稿主の話は自分達が前回勉強したどういう風にビジネスをするのかを端的に表してるね。

●piedinc
↑面白いよ!
日本でそういうコネベースのビジネススタイルを何度も目にした事があるし。
ライセンスだけじゃなくてね。
失敗した場合不利益を被るのは自分だけじゃなくて関連する人達全員になるからアウトサイダーを信用するのは凄く難しいって事。
失敗した場合の負担が凄く大きいから、新しい人間や新しいアイディアのリスクをとるのは凄く難しい訳!

●MissyPie
まだライセンスされてないアニメで将来Kickstarterのプロジェクトとして立ち上げるとしたらどれを選ぶ?
好きなアニメは何?

●piedinc
↑素晴らしい質問だけど計画が実行してから明かすから答えられない!
それにジンクスにしたくないしね。
私が好きなのは『蛍の墓』。
毎回泣けるから。
甘いストーリーよりもビターな方が好きで、キャラも型に嵌まってる必要はないと思ってる。
今敏の作品はどれも素晴らしいね。
明るい作品なら『銀の匙』。
明るくてテーマが深いから!

●DMarch_Hare
何でそのアニメを選択したわけ?

●piedinc
私がクラウドファンドで選んだ作品はこの2つの基準を満たす必要があったんだ。

・コアなファン層がある事。大作である必要は無し。
例えば『イヴの時間』はファンが300人いれば大丈夫だったけど、ファンの最小数を500人にしておいた。
で、そのファンと言うのは作品に対して情熱的である必要もあるね。

・後は権利保持者/製作者がクラウドファンドのプロジェクトを立ち上げる事を了承してくれる必要もある。
クラウドファンドの限定報酬として関連商品を作る権利を私に与えてくれる必要もあるし、原作画に関しても多大な手助けが必要だった。
(『スキップ・ビート!』に関してはそれが手に入らない!)
製作者のサインやインタビューも。

もちろん私がその作品を好きな事も!
ローカライゼーションに何か月も何か月もかけるからプロジェクトを信じる必要があるからね。

●cookie-thief
単なる好奇心で聞くんだけど、何で今になって『スキップ・ビート!』を?
少女向け作品に注目が当たるのは嬉しいけどアニメ業界的にはどんど作られなくなってるような。

●piedinc
↑何故『スキップ・ビート!』かって?素晴らしい質問だね!
正直言うと完全にひょんなことから(circumstances)だった。
少女向けアニメを探してる訳じゃなくて、そもそもテレビ東京の人に会ったのも別の作品(まだこっちではライセンスされてない)について聞くためだったし。
でもテレビ東京の未ライセンス作品の中に『スキップ・ビート!』があるのを見つけたってわけ。
クランチロールでストリーム配信されてた『スキップ・ビート!』は見てたから、言うまでもなくそのカタログの中に入ってたのは衝撃だったね。
ここで『スキップ・ビート!』を取らなかったら永遠に日の目を見ないだろう事は分かってた。
テレビ東京は私がクラウドファンディングをする事を信頼してくれて、そこで前に進む事になったと。
少女向けアニメがますます無視されつつあることは危惧してたし、正直言うとこれは私にとっても機会だったね。
コアな少女向けアニメファンはなかなか報われないから。
だからこのプロジェクトの目標の1つは少女向けアニメファンを喜ばせるためにも『スキップ・ビート!』が素晴らしい作品であると衆目を集める事だし、成功したら少女向けアニメのファンがプロジェクトを支援してくれるというデモンストレーションにもなる。

●Usa-kun
自分は『イヴの時間』の支援者でキャンペーンが進行していく様子はゾクゾクしてた。
『スキップ・ビート!』が上手くいってPied Piper, Inc.の伝説が続いていくことを期待してるよ。
Kickstarterがアニメのプロジェクト、独創的な才能、アニメファンを結ぶ場になると決断したのは何時?

●piedinc
↑『イヴの時間』のキャンペーンでのポジティブな声をありがとう。
例えば『イヴの時間』の時は2つの要素があったね。
1)湯浅政明監督の『キックハート』の成功を目にしてた。これはKickstarterでのアニメプロジェクトにおいてブレークスルーな出来事だったね。
2)最初はRighstuf(アニメ関連商品販売サイト)でネット配信版の『イヴの時間』を販売してたんだけど(日本製作で英語字幕付き)そこでの売り上げがびっくりする位で。
一瞬で300枚以上売れたんだよね。
だから劇場版ローカライゼーションするプロジェクトををkickstarterで立ち上げたら少なくとも300人はファンが集まるはずだと思って小さなプロジェクトを開始したわけ。
(目標額は1万8000ドル(約195万円))
で、期待を込めて”Launch(発射)”を押したら後は結果の通りと。

●ScarRed_Tiger
昔の名作についてPied Piperが競合他社より先んじてる点は何だと思う?
(FUNimationだとかDiscotek、GKIDS等々)
※FUNimationは『天空のエスカフローネ』のKickstarterを成功させている。Discotekは『北斗の拳』や『ルパン三世』のメディアを販売している。GKIDSはジブリ作品や『ももへの手紙』等の作品のメディアを海外で販売している

●piedinc
↑良い質問だね!
今の所私のアドバンテージは彼らの見逃してる作品を引っ張ってこれてる所かな。
とりあえずはアニメ業界の人間と差しで仕事ができる関係になりたいかな。
まずは一歩ずつだね。

●sj_mmoc
京アニに『けいおん!』3期を作らせて、自分らが見られるようにするには幾ら位掛かるんだ?

●piedinc
↑私やあなたが持っている金以上の額が必要だろうね?
あるいはひょっとしてお金があるとか?
だったら是非話がしたいね。

●einherjar81
ちょっと前に『スキップ・ビート!』のKickstarterが始まったと聞いた時にPied Pior(ハーメルンの笛吹き男)という名前の会社が資金を集めてるというのは面白いとジョークを言った記憶がある。

●piedinc
↑私が会社を立ち上げた時に長江努(DIRECTIONSでの私の元上司で『イヴの時間』の監督兼プロデューサー)がPied Piorという名前を凄く気に入ってたからそれで行く事にしたわけ。

●Felaguin
少女向けアニメ以外でどんなジャンルのアニメが”広く知られてない”と思う?
このプロジェクトが無事成功して出荷されたらこの成功を他の作品を他の世界各国に出すために活用できると思える?

●piedinc
↑素晴らしい質問だね!
幾つか違う分野があるかな。
アニメ映画だとまだライセンスされてない作品が幾つかある。
素晴らしい映画なんだけど細田守やジブリ作品じゃないからとか、何らかの理由でされてない作品。
アヌシー国際アニメーション映画祭の作品クオリティで北米にライセンスされてないアニメ映画もたくさんあるね。
(今は日本の作品に集中してるけど)

・監督や脚本にファンが付いてるジャンルに縛られないちょっと変わった作品とか。これはケースバイケースだけど幾つか目を付けてる。
・断然スポーツアニメ!真剣に探してる訳じゃないけど、このジャンルはファンがいるのに”伝統的な”販売方法で上手くいってないジャンルだと思う

どういうジャンルが然るべきローカライゼーションを受けていないと感じるか意見を聞いてみたいね。

●LandofObscusion
↑スポーツアニメはもっと家でじっくり見たいジャンルだ。
『ワンナウツ』とか『モンキーターン』、『リングにかけろ』、『黒子のバスケ』はそもそもまず見られない。
(『黒子のバスケ』は配信してるけどアメリカでメディアが販売されてない)

●mrcandyman
とにかく『イヴの時間』のリリースは素晴らしかったと言いたくて。
ポストカードをゲットできたのも嬉しい。

●piedinc
↑ありがとう!!!
『イヴの時間』のリリースに満足してくれて私も嬉しいよ!
本当に愛ゆえの仕事だったし、支援者無しでは実現できなかったから。
ポストカードを気に入ってくれたのも嬉しいね。

●Tofu-Kitt
どうやってアニメのクラウドファンドと会社を始めたの?
起業資金をどうやって集めたのか興味があって。
自分のお金を使った時もあると聞いた事もあるけど。
どうやって日本のライセンス保持者と信頼関係を築けたの?
上手く行きそうなライセンス情報は他にもある?
以前にアニメ業界での経験はあった?

●piedinc
↑質問ありがとう!
・クラウドファンドはたまたまって感じかな。当時は『イヴの時間』の海外販売をしてる最中で、Kickstarterを試してみようって話になった訳。
で、そのキャンペーンは上手くいったし何から何まで楽しかったから、クラウドファンドを専門にしようと決めたんだ。

・どうやって起業資金を集めたか?私はPiedPiperを始めるための資本は持ってなかったよ。
でも信頼できるクライアントがいたから、少ないながらも安定した収入があったから。
そのクライアントは『イヴの時間』を作ったDIRECTIONS(本社は東京)。
私はDIRECTIONSの海外事業に関してフルタイムで働いてて。
私がPied Piperを立ち上げた時にDIRECTIONSがPied Piperを雇ってくれたと。
だから凄くラッキーだったね。

・そう、私は最初のプロジェクトで自分の資金を使ったよ。リスクもあったね。

・どうやって日本のライセンス保持者と信頼関係を築けるか?
私の場合は前から『イヴの時間』の権利を持っていたDIRECTIONSと強い繋がりがあったのがラッキーだったね。
そこで働いてた訳だし!

他の日本の権利保持者と会う時は私が『イヴの時間』でやった事を見せているよ。
このプロジェクトは私の名刺代わり!

・他のアニメ業界の経験?数年前に『イヴの時間』でDIRECTIONSで仕事をしてたよ(アニメ以外の他の仕事もしてた。テレビ番組をたくさん)。
ニューヨークに住んでた頃は天野喜孝のオフィスでプロデューサーとして働いてた事がある。
素晴らしい体験だったね!






『イヴの時間』で大成功を収め、『スキップ・ビート!』も無事成功し、着実に実績を積み上げています。
今は海外の配信業者が製作委員会に参加してくるのがトレンドとなっていますが、海外ではメディア化されていない作品もたくさんあるのでクラウドファンドで確実に資金を集めて販売するのは良い方法なのかも。
日本でも『キスダムR』はファンからの入金2000個を達成した事でブルーレイ化が成功しています。
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