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デンマークにあるレストランnomaは革新的な料理を作るレストランとして世界中で高い評価を得ています。
発酵食品を積極的に取り入れていて日本の味噌や麹も料理に使っています。
そのnomaの発酵ラボでインターンとして働いていた人が質問に答えていました。

引用元:reddit.com

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●投稿主
去年の夏にインターンとして3か月間nomaの発酵ラボで働いてたけど何か質問ある?
nomaが新しい発酵食品の本を出版する直前まで在籍していて現行のベジタリアンメニューと将来のメニューについての調査を行ってた。
あとレストランで使う味噌と麹も作ってたよ。
ラボのメンバーは4人。
自分達のやっていた方法について等の質問があれば喜んで答えよう。

これがラボで作っていた麹
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image credit:reddit.com

●comment
これは滅茶苦茶興味深いな。
個人的に一番の発酵食品は何だと思ってる?
最悪は?
発酵食品が上手く活用されているかnomaの料理を食べることはできる?

●投稿主
↑ラボで働いてる時にnomaの料理を食べた事はないね。
でもラボで働く場合は1週間くらいキッチンで働くことになる。
自分がキッチンで働いた時は失敗とか盛り付けが上手くいかなかった料理を食べさせてくれたよ。
最悪の発酵食品は発酵が上手くいかなかった豚の血の発酵食品かな。
nomaでは自分が来る何年も前から挑戦していて自分がいた時も上手くいってなかった。
磁石や遠心分離機を使ってもヘモグロビンから鉄分を取り除くことは不可能だったんだ。
個人的に自分がした中で一番最高の発酵だと思っているのは麹と牛肉のガルム(※古代ギリシャで作られていた魚醤:wikipedia)の作り方を学んだこと。
乳酸発酵させたプラムとアンズタケが一番美味しい。
一番作るのがテマなのはプラムの仁を使ったアイスクリームを乗せた麹ホットケーキ。
時間がかかるんで研究する時間が少なくなるし、作業する時間ばかり増えたから。

●comment
↑凄いな。
どの位先んじて動いていたんだろう?
つまり、野菜発酵の研究員として研究をしながらキッチンで必要になる材料リストも用意されてる訳だろ?
3週間分くらいかな?
nomaは色んな発酵食品を日常的に使ってるから滅茶苦茶忙しい現場だという想像しかできないぞ。
一番時間がかかる発酵食品は何だろう?
味噌かな?
一番短いのは?
将来的に発酵ラボに勤めるという目標があるのか、それとも単にnomaで働いてみたいと思ってその機会があっただけ?
次は何を目指す予定?

●投稿主
↑麹の場合は作っても3日分だね。
味噌とガルムに関しては最低でも1シーズン(3か月)前に用意してる。
ラボで作るわけじゃなくて、メニューに使う発酵食品の準備をしてたんだ。
1週間で必要なコンブチャ(※日本でいう紅茶キノコのこと)、3日分の麹とかレストランで必要になる量のリストを貰うことになるね。
ラボは何週間も前から大量に発酵させてるからそんなに忙しいって事はないよ。
新鮮なのを用意しなくちゃいけないのはコンブチャや麹くらいだね。
味噌やガルム、乳酸発酵食品はもっとずっと前から用意してある。

一番短期間で作れるのは乳酸発酵の麹水。
真空パックに入れておけば24時間以内にパンパンに発酵する。
毎日脱気しなかったら多分破裂するだろうな。
つまり週末でも何度かチェックしなくちゃいけないというわけだ。
(嬉しいことにそれはインターンの仕事じゃなかった)
だいたい2~3日で完成。
乳酸発酵食品は毎日出来をチェックしてたね。
かなり早く発酵が進むから。
発酵業界における出来というのは酸味と味と甘みのバランスが取れた状態のことね。
一番時間がかかるのは当然だけど味噌。
ガルムも時間がかかるけどここには他のチャンバーの倍の温度にできる特製チャンバーがあるからガルムの製造工程を短縮できる。
個人的に気に入ってる発酵食品はチキンガルムで、これはチキン醤油や脂っこさや重さのないチキンジュースみたいなものかな。
今は手羽先で作ってるよ。

発酵ラボで働くための手段はキッチンで働くためのそれとは違ってる。
ラボのインターンが2人に対してキッチンは40人だし、自分は最初からラボで働くつもりだった。
長期的な目標として働いてたわけじゃなくて、人づてでそういう仕事があると知ったんだ。
大学を卒業したばかりで南日本のミシュランの三つ星を獲得した寿司屋で働いてる。
それも今月で終わりで、そこから先のことはまだ未定。
前から料理人になりたかったから大学で勉強しながらキッチンに立ってた。
ラボでは料理人の経験がある科学者を求めていたからちょうど自分がその条件にあってたわけだね。

●comment
インターンシップ終了後に体験を役立てたことはある?
プロの料理人になった?もしくは自宅で発酵食品を作ってる?

●投稿主
↑発酵食品は別にしてインターンシップで学んだ一番重要なことは発酵のバランスとは味であるということだね。
酸味、甘味、味(うま味)のバランスが取れてなくちゃいけない。
乳酸発酵させたプラムの場合は未熟な実を使うんだけど未熟過ぎてもいけなくて、ちょうどいい糖度を持った完璧な未熟具合というのがあるんだ。
乳酸発酵食品は毎日出来を確認するために味見をしてる。
今は南日本のミシュランの三つ星を持っている10席の寿司屋で働いてるよ。
日本に来たおかげで色んな発酵食品を作れたし日本の農作物も体験できたし、日本の米や日本独自の麹菌で麹作りもしたよ。
(nomaでは大抵麦麹を作ってる)
nomaで働くことで自分の発酵のスタイルはかなり変わったと言えるね。
家で作る他の発酵食品と言えば実験的な酢漬けくらいかな。

●comment
投稿主のバックグラウンドを教えてもらえないか?

●投稿主
↑イングランドのオックスフォード大学で植物科学を専攻したけど夏休みにはロンドンのレストランで料理人のバイトをしてた。
あとは大学のワイン試飲大会に出場したし3か月間パリの製菓学校にも通ってた。
(イギリス市民でもヨーロッパ市民でもないよ)

●comment
デイビット・シルバー(※nomaの発酵ラボのリーダー)と一緒に働くのってどんな感じ?
彼は色んな影響力を持っているみたいだけどアプローチの際に何らかの哲学を持っているのかな?

●投稿主
↑彼と一緒に1日12時間ラボで働いたことがあるけど一番凄いと思ったのは研究欲だね。
いつも何かを読んで調査してる。
ラボのトップだから実際の作業や料理をたくさんしてる訳じゃなくて次に向けての研究に集中してる。
職員みんなで食事をしてる時でも他の人はスマホでInstagramを見たりお喋りをしてるけど彼はスマホで読書をしてる。
自分は植物科学の学位を持ってるけど彼は生物学や一般科学について学位を取れる以上の書物を読んでるよ。
これで大学に行ったことがないというんだから凄い。
彼の哲学は”仕事はスマートに、そして挑戦し続ける”。

●comment
スパイシーガーリックハニー(※蜂蜜漬け)を作ろうとしてる。
生蜂蜜とキャロライナ・リーパー(※世界一辛いと言われる唐辛子:wikipedia)、大量のニンニクは用意した。
何かお勧めはある?

●投稿主
↑生で低温殺菌されていない蜂蜜は水分含有量の高さから蜂蜜発酵に不可欠。
加工蜂蜜は加熱によって水分量が少なくなってるんだ。
水分量が19~20%を下回ると蜂蜜は糖度が高くなるから酵母が休眠状態になってしまう。
生蜂蜜を使うということだから充分な水分量と天然酵母が含まれてるはずなんでそれは心配ないと思うな。
それから蜂蜜は空気中の水分を吸収するんで湿度の高いところに置いた方が発酵しやすくなるね。
おそらく糖分が結晶化すると思うけど糖分が固着することで蜂蜜全体の水分量が高くなるから発酵しやすくなる。
(結晶化は悪いことばかりじゃない)
ニンニクの皮を剥いてから手で砕いたらニンニクの水分が出て、それが蜂蜜の中に加わるからそれでも発酵が早まる。
pH4.6が鍵だ!
それを下回ればボツリヌス菌は生きられない。
pHチェッカーを使ってクエン酸や酢でpH4.6以下に保つと良いよ。

●comment
使っていた食材のレベルは申し分なかった?
例えば野菜は有機栽培の野菜を使ってるとか?
あるいは良いものは料理に使って発酵には少し品質の劣るものを使ってるとか?
(有機栽培の規模を考えるに)
料理に使ってるような新鮮で完熟したプラムを大量に使ってる?

●投稿主
↑nomaには2つのアプローチがあると思う。
(デイビット・シルバーの考えは違うだろうけど自分にはそう見えた)

1.作物の発酵に関しては契約してる地元の農家の育てた野菜を使う傾向があった。
通常高品質なものばかりで料理に使われている食材と劣る事はなかったね。

2.とは言え通常キッチンでは無駄となる部分を発酵させることもあった。
これに関してはなるべく無駄を出さないようにあらゆるもので実験してたよ。
常に上手くいったわけじゃないけど最善を尽くしてた。
キッチンで材料が余った時はいつも色んな方法で発酵させようとしたよ。
野菜や肉のトリミングと同じだね。

基本的には発酵できるものならなんでも発酵させようとしてたよ。
廃棄物を減らすという目的でも行っていて確かにそれは重要であるけど唯一の目的ではなかったね。
トリュフやアミガサタケなど高級食材の保存としても行っていたし。
キロ単位のプラムを完璧に発酵させるのは完熟したプラムをそのまま使うのと同じくらい大切なことだと思う。
ある意味で発酵とはそのものの状態を適切に保つことでもある。
夏の間に保存しておいた果物を冬に食べられるというのは新鮮な状態で食べるのと違っているとはしても驚きなことだと思うしね。

●comment
ラボでは発酵を行うために一定の温度を保ってるということだけど味の違いを比較するために同時に常温発酵も行ってたりするのかな?

●投稿主
↑素晴らしい質問だね!
比較するために同時に常温発酵もしてるけど温度によって味に明確な違いがでるね。
だから乳酸発酵など繊細な発酵では常温発酵しか行わないんだ。
高温にすると発酵は早まるかもしれないけどnomaでは好まれてない味も強くなってしまうから。
実際nomaで60℃のチャンバーにかけているのはガルムだけだ。
これはガルムは微生物を培養してないという点において発酵とは言えないから。
ガルムは肉から出る天然酵素を使って肉を分解してる。
ある意味で肉たんぱく質を消化する外部の胃袋のようなものだね。
発酵速度を早めるために麹を加えてはいるけど、これは麹でガルムを育ててるんじゃなくて死んだ麹から出る酵素を使うため。

●comment
マルチクッカーで発酵させてる人をどう思う?
納豆は作ってみたことある?

●投稿主
正直言って発酵はどんなものでもどこでもどんな手段でもできる。
発酵させるための容器や道具に偏見があっては駄目だと思う。
というか賢いやり方を考えたとして称賛されるべきだろうね。
マルチクッカーは発酵のための温度調整を可能にする凄く正確だからばっちりだと思うよ。
納豆に関しては今は日本に住んでるから食べた事はあるけど作ってみたことはないね。





世界最高のレストランと呼ばれるnomaでは発酵食品も積極的に取り入れており、その影響で麹が海外でも注目されてきているそうです。
味噌も自前で作っているようです。




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ノーマの発酵ガイド (角川書店単行本)