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『鋼の錬金術師』、『銀の匙』の作者、荒川弘が自身の生まれ育った北海道の農家の暮らし、農業への愛を綴ったエッセイ漫画『百姓貴族』。
こちらが先日北米向けの漫画ポータルサイトJManga.comでリリースされました。
レビューが上がっていたので紹介します。

引用元:hyakusho-kizoku-vol-1
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緩い、即興的なスタイルで描かれている『百姓貴族』には、大ヒット作『鋼の錬金術師』の巻末おまけ漫画を思い出す読者もいるかもしれない。
これは百姓になるための本ではない。
彼女と同じく”少年誌で描いている女性作家”田辺イエロウのように、彼女のおまけ漫画は洗練された物語である本編と同じくらい楽しさ満載で、お気に入りのキャラ達が自由に動き廻り、仕事について愚痴をこぼし、彼女の前職である農家での事が反映されている。

『百姓貴族』は人気作品にしようというプレッシャーよりもむしろ、楽しさと苦しさに溢れた農家での生活に焦点を当てている。
荒川の紹介するユーモア溢れる逸話は、シマリスとの戦い、作物泥棒だけではなく、家畜の薬を自分にも使ってしまう彼女の家族達にも及んでいる。
彼女は牛の性格―明らかに、彼らは素晴らしいペットだ―、更に日本の食を担う北海道についても軽妙に語っている。
(第7章で彼女が言うには、北海道が他の日本の島々への食糧供給を止めた場合、日本の食料輸入率は50%から80%に上がるらしい)

荒川は自身の作家としての人生を軽視しているわけではない。
物語を通して、農業漫画の市場性について懐疑的な編集者とのやりとりを見る事が出来る。
「どうやって、ウンコについて2話も描くんですか?」
「農家にとって、ウンコは友達だ」
編集者の怒りに満ちた疑問に荒川は軽快に返す。
それ以外にも、漫画の取り上げる内容について「牛の乳首についてだって語れる」と彼女は断言している。

こういった議論が示唆するように、荒川は食物が何処から来るのかについて日本の読者の目を向けさせる事に熱心だ。
彼女は牛の血統について、乳製品に対する政府の干渉への非難、農家の運営に寄与しない動物がどうなるのかといった食料消費に関する事実を描いている。
彼女は野生のクマ、愚かな観光客、納屋の猫といったギャグの中に、持続可能な農業運営についてのシリアスな議論等を軽々と点在させているのだ。

しっかりとした翻訳でなければ、面白い物(或いは啓発的なもの)にはならない。
私は過去のJMangaのタイトルで度々あった融通の利かない翻訳には不満を持っていた。
『妄想少女オタク系』、英語では『Fujoshi Rumi』で知られている漫画がそのいい証拠だ。
しかし、『百姓貴族』は嬉しい驚きだった。
翻訳者は流れるようなテキストにする事において素晴らしい仕事をしている。
会話文の英語は読んでいて嬉しくなってくる。
実際ページをめくる度に大笑いしていたと、翻訳者への賛辞として言いたい。
『百姓貴族』は『鋼の錬金術師』のファン全員に向いているとは言えない。
作者の良さは魔法戦闘時における情報密度の濃さにあるという人達には向いていないだろう。
『百姓貴族』は農家の楽しさ溢れる日々を描いているが、農業に興味のある都市部の人向けの作品でもある。
凄くお勧め。



↓この記事につけられたコメント

●ジャスティン
記事を読んでみたけど…お金を払うだけの価値はあるのかな?

●キャサリン・デイシー(ブログ主)
イエス!
今までJMangaに支払ってきた漫画の中で、『百姓貴族』が一番楽しかったくらい!
もちろん、『夕凪の街 桜の国』の作者の新作が面白くなかったって事じゃないよ。
でも、『百姓貴族』は英語圏ではほとんどライセンスされなかった種類の漫画だから(今までは!)。
しかも牛もいるし!
ちなみに、今まで新書館から出てる漫画は全て1冊5.99ドル(約455円)。
ずっとその値段なのかはわからないけど。

●リジ
この記事楽しかった。
(百姓貴族を)読めないのが最低だ。
JMangaがグローバルに展開してくれる事を期待してるよ。

●ジェン
牛/鶏農家で生まれ育ったから、この漫画は本当に楽しかった。
たくさんの思い出が甦ってきたよ。
印刷して、母親に見せたくなったくらい。
(クマの心配をしたことは無いけどね)

●キャサリン・デイシー
↑『百姓貴族』が農家で生まれ育った人の心を打った事が嬉しい!
漫画の雰囲気と主題は凄く良かったんだけど、私は都市部の生まれで農業についてはあまり知らなかったから。
本に関しては、これが紙媒体になる事を願ってる。
大抵の漫画はラップトップで読むのもオーケィなんだけど、これはむしろ本の形で持ってたいな。
(あるいはiPad仕様で)
ローディング時間が苦痛なくらい遅いから!

●N
疑問…JMangaはまだ翻訳者のリストを公開してないのかな?
クレジットが無い事がちょっと気になってるんだよね。

●キャサリン・デイシー
↑グッドクエスチョン!
『百姓貴族』のメインページには翻訳者の名前は載っていなかった。
本編自体もクリックしてみたけど、誰の名前も載ってなかった。
『百姓貴族』は間違いなくJMangaで最も強力な商品だし、この作品を翻訳した人を知れたらいいんだけど。

●クリステン
…これは『銀の匙』のリサーチ部分なのかな。
自分はJMangaにアクセスする事が出来ないから、これを本で入手する必要があるよ!
面白そう!
彼女の農場ライフが『銀の匙』の魅力を説明してるんだろうな。

●キャサリン・デイシー
質問なんだけど、『銀の匙』って何?
北米の出版社が手を出しそうな作品?
それともインターネットで読むしかないような類の漫画?
興味がそそられた!

●リジ
『銀の匙』は荒川が現在描いている漫画で、週刊少年サンデーで連載されてるんだ。
これは北海道を舞台にした農業高校の日常系コメディなんだ。
主人公の少年は家から離れたがっていた都会の少年で、そうしたいだけの完璧な理由を持っている。
(北米で出版する可能性は)大いにあると思うね。
主題に関しては国際市場に持っていくにはいささか奇妙ではあるけれど、荒川のネームバリューがそれを可能にすると思う。
誰の眼にも明らかなくらい『百姓貴族』が売れたら、『銀の匙』も出版しようとするかもね。

●クリステン
基本的にはリジの言う通り。
これは農場での暮らしを思い出させるハイクオリティな農業漫画。
『銀の匙』は『もやしもん』のような面白さがあるし、市場を開拓すチャンスがあると思う。
つまり、『もやしもん』が(海外で)出版された以上『銀の匙』がそうなっても不思議じゃないって事。
とりわけ、大人気作『ハガレン』の作者なんだし。
市場の熱意によるけど、おそらくVizが出すと思う。
(今のところ、ファンはそれほど熱心には見えないけど)
『ハガレン』の2匹目のドジョウを狙いたいんだろうけど、『銀の匙』はそうはならないような気がするな。
別にいいんだけど。
多分、JMangaでリリースする事になるんじゃないかな…多分…。

●キャサリン・デイシー
サンクス、リジ&クリステン。
バトル偏重な少年漫画には最近うんざりしてたんだけど、『銀の匙』は私向きみたい。
JMangaがライセンスを取得する事はありえると思う。
特に『百姓貴族』の反響が良かった場合は。





農家育ちの人ならどこかに懐かしさを感じる部分があるのは、どの国であろうと生き物、作物を育てる事に共通する点があるからなのでしょうか。
作者の子供時代の経験、農業への思いはそのまま少年サンデーで連載中の『銀の匙』のテーマ、ネタにもなっているので、『銀の匙』の舞台裏としても楽しめる作品です。
コメントにもあるとおり『銀の匙』は現在海外へのライセンス供給はされていませんが、海外でも大ヒットした『ハガレン』の作者の最新作であり、日本でも大ヒットしているだけに八軒が海外デビューするのもそう遠くない事かも。
『百姓貴族』のようなエッセイ漫画は日本国内では何気に人気のあるジャンルであるものの、海外で販売された事はほとんど無かったのですが、エッセイ自体は海外でも人気のジャンルなのでエッセイ漫画も人気となる可能性はあるかも。

管理人雑記:
ドラマ化か~
これでバス釣りブームが再燃すると思うと胸が熱くなるな…
そして今週の『空が灰色だから』が怖えええええ。
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