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漫画家・谷口ジローは国際的に評価が高く、海外での受賞経験も幾度と無くありますが、原作者・久住昌之と組んだこの『孤独のグルメ』は長らくフランス語版しか出版されていませんでした。
この度、ようやく英語版がJManga.comより配信となりました。

海外でのレビューをいくつか紹介します。

※敬称略
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■organizationasg.com

『孤独のグルメ』を読むとストレスを感じる。
ドラマはないものの、たくさんの料理が描かれ、読み終わるまでずっと空腹を感じるからだ。
もちろん、ほとんどの料理漫画は厳密に料理に焦点を当てているものだ。

『孤独のグルメ』は主人公・井之頭五郎についての様々な事を知らせてくれる。
個人輸入業を営んでいる事、4年前に恋人と別れた事、驚くほどの大食漢である事!
悲しい事に、この作品には他の登場人物はほとんど出てこない。
それが残念だ。
そうなっていれば、JMangaに追加されたこの1巻の単行本が更に膨らむ事になったのだが。

それはさておき、五郎の性格は彼がしようとする様々な食事で描かれる事になる。
もちろん、料理はこの作品において不可欠な要素だ。
私は久住昌之(原作者)が登場人物を深く掘り下げようとしたとは思えない。
この作品の目的は、普通の人が料理を求め、食事をするための最良な方法を語る様を描く事なのだ。
食事をする最良の方法に関しては、従業員を叱責しているレストランのシェフを五郎が非難する話で強調されている。

この漫画において料理は重要ではあるが、料理や五郎を除いた部分にこそ重要な物があると説いている事がこの漫画の最もユニークな所だ。
この作品は、魚料理を出すお店には年のいった女性をよく見かける、焼肉屋では食べるだけではなく人々の性格も垣間見えるといった小さなディテールを描いている。
食べるという事はそこに経験が追加されていくのだ。
テレビのFood Networkチャンネルの『Diners, Drive-ins and Dives,』で、素晴らしい料理が作られていく様を見たことのある人なら、その中で料理を食べ、素晴らしい時を過ごしている人たちの個性を見たことだろう。
久住は食べ物の説明に終始せず五郎に関する出来事を描くように気をつけているようで、彼の性格の一部は彼が料理を味わった時の反応として描かれている。
これは谷口ジローの作画が助けとなっており、もちろん料理の描写も凄く良いものになっている。
『孤独のグルメ』を読むのに頭脳は必要としないが、それでも読むことで食事には何が大事なのか思い出させてくれるだろう。
そして、この作品を構成する他の全ての要素もしっかりと作られており、楽しく読めるものとなっている。


■mangacritic.com

『美味しんぼ』の出版が止まった事をまだ嘆いている?
もう5回も『西洋骨董洋菓子店』を読み返している?
『トリコ』に出てくる食用生物について思いをめぐらせている?
もしそのどれかの質問に”yes”を答えるのなら、ここに素晴らしいニュースがある。
もっとも男らしい漫画を描く谷口ジローによる『孤独のグルメ』がJMangaからリリースされるのだ。
私の漫画仲間であるDavid Welshは昨年、フランスの出版物の中からこの漫画を発掘し、レビューを書いている。

久住昌之原作によるこの作品は、谷口ジローのペンによって命を吹き込まれ、どことなく(谷口ジローの)『歩くひと』に似ている。

光文社コミック叢書SIGNAL 『 歩くひと PLUS 』 THE DIRECTOR’S CUT EDITION
光文社コミック叢書SIGNAL 『 歩くひと PLUS 』 THE DIRECTOR’S CUT EDITION

各話ごとに主人公は普通の食事をし、それによって記憶を呼び起こし、新たな思考を巡らせ、ひそかな出会いを引き起こしていく。



谷口ジローによるムーディな料理漫画?
その通り。
例え狼との格闘や猛吹雪の中100フィートの岩山に立ち向かうという事が無くとも、私は読んだ。
何もかもが良かった。
私はもうこれ以上待つ事はない。
『孤独のグルメ』は2012年2月21日金曜日に配信される。
唯一疑問に思っているのはFanfare / Ponent Mon出版(訳注:英語版谷口ジロー作品を数多く出版している)がいつデラックスプリント版を出すのかという事だ。


■animemiz.com

井之頭五郎は個人輸入業者で、『孤独のグルメ』は日本での彼の食事にまつわる経験が描かれている。
『孤独のグルメ』の内容はフィクションキャラによるZagat誌のレストラン紹介のような物だ。
どことなくよしながふみの『愛がなくても喰ってゆけます。』にも似ている。

愛がなくても喰ってゆけます。
愛がなくても喰ってゆけます。

この漫画のために多くの取材をした事は明らかだろう。
私はこの日常経験漫画を英語で読むチャンスをずっと伺っていたのだ。
谷口ジローの詳細な作画もあるし、お勧めである事に間違いはないはず?

私はこの作者の作品をほとんど購入しているし、コンベンションで Fanfare出版のブースにも通っているのでこの新作に関しては以前から知っていた。
私の買った谷口作品はたいてい良い点しかなかったから、『孤独のグルメ』を読んでみて良い点と悪い点があった事には驚いた。

まず、良かった点を語る前に悪かった点を語るべきだろう。
悪かった点というのは、今まで谷口作品を読んできた経験による期待から来た物だ。
今までは常に印刷媒体で読んできたので、これが初めてのデジタル作品という事になる。私はボーイズラブ作品をよく買っているし、JMangaが合法的に読むことの出来るソースとして良くない、と言いたいわけではない。
それでも、これを座って読み続けるのは大変な事だった。
これが本の形式であったら、しおりを挟んでおけばいいのだが…読んでる最中、私の内なる声がこう告げていた。
読み終えたほうが良い、と。
本というのは座って読むよりも別の読み方をした方が良い事がしばしある。
『遥かなる町へ』は自分のペースで読むと2日かかったものだ。

遥かな町へ (ビッグコミックススペシャル)
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そして『孤独のグルメ』は詳細な絵が多く、ズームを多用しなければならなかった。
しかし、これは谷口作品である以上最初から予測されていた事だ。
それでも、私はJMangaにiPadで読めるようなアプリを期待せざるを得ない。
あるいは印刷媒体で出してくれるか。
再読する時は座って読むようなプレッシャー抜きで読みたいから。

別の悪かった点として、最終的に私は主人公の井之頭に対してかなり悪い印象を持った。
翻訳のせいで彼が間抜けに感じるのか、それとも彼の内なる声が苛立たせるのだろうか。
彼は空腹を抱えてレストランに入り、その後にレストランについて、味の組み合わせに関してどれだけ気に入らないかといった不満を心の中でぶちまけるのだ。
その後、物語は良い話へと戻っていく。
第2話か第3話を例にあげるよう。
彼はかつての恋人に風邪を引くからと言って皮のコートを着せる。
実に男らしい行為だ。
こうして彼は主人公へと戻り、読者は彼の旅を追いかけていく事になるのだ。

良い面というのはこれが谷口の作品であるという事で、リッチなストーリーに詳細な作画のコンビネーションである事は保証付だ。
これは大人のための読み物だけでなく、子供や十代でも読めると思う。
そして、井之頭の旅路は私に日本で過ごした短い時間を懐かしく思い起こさせる。
お勧めをするならば、私は池袋にある『Milky Way』のパフェを強く、強くお勧めしよう。
この本は日本食を食べたことのある人にとって良いフォローアップとなるし、更に色々と食べたくさせてくれる。
お気に入りの話は中盤辺りにあるコンビニのエピソードで、日本のコンビにはアメリカのコンビニの100倍も良い物なのだ。

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■comicsworthreading.com

井之頭五郎は日本中を旅して回る個人輸入業者だ。
食事は五郎にとって大事な事であり、彼は出張先で地元の料理屋に入る事を楽しみにしている。
しかし、彼は料理オタクではない。
彼は上等のステーキと同じように居酒屋料理も楽しむのだ。
『孤独のグルメ』は一人称形式の料理探検を我々に与えてくれる。

この本を別の名で呼ぶとしたら『歩くひとの食事記』だろうか。
五郎は地元の料理を食べ物を求めて彷徨うことに多くの時間を費やしている。
別に不満を言っているわけではない。
谷口ジローによる詳細な描写は観光旅行を行っているようだ。

これは風変わりな料理漫画だ。
この漫画ではよしながふみの『愛がなくても喰ってゆけます。』同様に、五郎による詩的な解説を聞く事はない。
それに彼は雁屋哲の『美味しんぼ』のように食材や、それぞれが補完しあっている様を詳細に説明したりもしない。
その替わり、五郎は食事とは満足のいく経験をする事だと語り、注文の際にバランスを考えて頼もうと試みる。
このタイトルにも関わらず、これは私のような普通の人間にとって大いに共感できる。
五郎にとって、食事と同じくらいレストランの雰囲気は重要な事だ。

かれは行く場所のほとんどで客と提供された物に対してじっくりと観察している。
これは読者にその場所の感覚を提供する上で驚くほどの効果がある。
まるで五郎の隣に座っているかのような感覚になるのだ。
とある章では、五郎は従業員に乱暴な店主に対し手荒な治療を行う。
彼はその主人に対して、ネガティブな雰囲気になったせいで食欲を失ったと主張した。
善行を行った訳ではないのだ!

食欲と言えば、五郎の食事はいつも印象的だ。
彼の食事を見るだけで太ってしまうような感じがする。
彼は普通の食事の量を遥かに超えてガンガン食べまくる。
しばし彼は食べ過ぎたとこぼしているのだが、それでも彼はその後の食事で様々なメニューを試してみる事を止めようとはしない。
深夜に軽く食べるためのコンビ二訪問ですら彼にとっては大きなショッピング遠征となる。
五郎が家ほども大きくなっていないのが驚きだ。

谷口の作画は相変わらずゴージャス。
『金魚屋古書店』の3巻で登場人物がリアルに描かれた料理はお腹が空いてくると言っていたが、完全に同意する。

金魚屋古書店 3 (IKKI COMICS)
金魚屋古書店 3 (IKKI COMICS)

谷口の作画は五郎と一緒にテーブルについているようだ。
彼のリアルスティックな作画は西洋の読者にとって非常に馴染みやすい。
問題があるとすればこの漫画へのアクセス方法で、唯一JMangaでのみ読める事。
これは印刷媒体で読もうとするといくつもの障害を乗り越える必要がある事を意味する。

『孤独のグルメ』は普段漫画を読まない人を魅了する完璧な漫画であるだけに、これは凄く残念な事だ。
JMangaの問題点で特に目立つのは、VizやDarkHorse、Comixologyのようなシンプルな支払方法が欠如している点だ。
更に言えば、JMangaはプレビューを用意していると主張しているが、そこにあるのは表紙とタイトルページ、目次だけだ。
購入する前に一部を読む事が出来ればいいのだが。

『孤独のグルメ』は谷口による素晴らしい日常漫画であり、『歩くひと』や『冬の動物園』のファンにとって同じくらい楽しい物になるだろう。
これらの本と同じように、『孤独のグルメ』は素晴らしい単巻の作品だ。
この作品をComic・漫画・バンド・デシネ等々、全ての読者にお勧めする。


今更説明するまでも無く有名な作品であり、谷口ジローは海外も評価が高いので、むしろ今までフランス語版しか出ていなかったのか不思議なくらいなのですが、ようやく全世界に向けて配信となりました。

深夜についつい買いすぎてしまう、雰囲気の悪いお店で居心地の悪い思いをする等、様々なエピソードで主人公に共感するのがこの作品の魅力でしょうか。
現在は『SPA!』にて不定期連載中です。
早く単行本未収録エピソードを読んでみたい…

久住昌之はうさくん水沢悦子作画による『花のズボラ飯』の他に週刊ゴラクにて『食の軍師』連載中。
孤独のグルメと違い、こちらはハイテンションです。
谷口ジローは現在グランドジャンプPREMIUMにて稲見 一良の『猟犬探偵』を漫画化した『サイドキック』を連載中。
これがまたハードボイルドで面白いのです。

おまけ:
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